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2016-05-11 23:34:00

キウイフルーツの栄養成分について

南半球のニュージーランドでは、キウイが収穫・販売期を迎えたようです。NZ産キウイの輸入企業によるテレビCMが流れているのをたまたま目にしました。

この企業はこれまでも、若くて健康的な有名女性タレントをイメージモデルとして、テレビCMをはじめ、販売プロモーション活動をされてきました。
国産であれ輸入品であれ、それがキウイフルーツの普及、消費拡大に貢献された役割は大きいものと思います。

 

本年のCMでは、キウイ果実をかたどった「ゆるキャラ」のような人形?(ぬいぐるみ?)を登場させ、
「キウイにはあれもあれもあれも含まれている」
「キウイはビタミンだけじゃない」
と、キウイに豊富な種類の栄養素が含まれていることを強調するCMになっていました。

 

ただ、私にとっては、ビタミンだけではないという、その多く含まれる栄養素として列挙されている(ビタミンC、食物繊維、葉酸、カリウム、ビタミンE)中に、キウイフルーツ果実で最も重要な栄養成分である「アクチニジン」が表示されていないことに、違和感を感じました。

 

「アクチニジン」(Actinidin)は、タンパク質分解酵素で、その名前はキウイフルーツの植物学上の学名(Actinidia deliciosa、Actinidia chinensisなど)に由来します。
調理の上手な方は、硬い肉をキウイと一緒に煮込むことでやわらかく食べられるようにできることを、良く知っておられると思います。また、食肉等の消化促進にも役立つことが知られています。

それだけ重要な栄養成分であるのに、キウイにはいろいろな栄養素が豊富に含まれていることを強調するCMにおいて表示しないのは
ちょっと勿体ない気がします。

 

キウイフルーツのアクチニジンについては、研究の第一人者である駒沢女子大学健康栄養学科教授の西山一朗先生が、インターネット上に開設されているサイトにて、消費者・農家にも分かりやすい解説をされています。

キウイフルーツ研究室  http://www1.ttv.ne.jp/~kiwi/index.html

 

ここで重要なのは、アクチニジンの含有量は品種ごとに差が大きいということです。
緑色の「ヘイワード」等ではアクチニジンは豊富に含まれていますが、NZ産の黄色種に多い「ホート16A」ではほとんど含まれず、同じく「ZESY002」でもヘイワードの3割程度しか含まれていないことが、西山先生のサイトで明らかにされています(一方、日本在来のサルナシ系の品種では、ヘイワードよりも数倍高い濃度でアクチニジンが含まれているものがあるようです)。


そこで思ったのは、件のNZ産キウイのテレビCMで、キウイの栄養素としてあえてアクチニジンを外したのは、NZ産キウイの黄色種にはアクチニジンが含まれないか少ないことへの配慮なのだろうということです。
それでも、キウイの栄養成分として最も重要なものはアクチニジンであろうし、これを外すのはやはりいかがなものであろうかと思った次第です。
「アクチニジンを含まない」というのもキウイとしての重要な形質で、含まない(少ない)ことによって、たとえばキウイのゼリーを作ることができます(アクチニジンを豊富に含む品種では、ゼラチンを溶かしてしまうので、ゼリーを作ることができません)。

 

 

なお、「東京ゴールド」は黄色種としては珍しいのですが、ヘイワードと同程度のアクチニジンを含みます。

 

 

 

 

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