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2022-06-12 22:20:00

日本果樹種苗協会「果樹種苗」誌に論文掲載されました

 

 このたび、果樹苗木関係の業界団体である日本果樹種苗協会が発行する季刊誌「果樹種苗」に論文を掲載する機会をいただきました。

 かつて私が東京都農業試験場の研修生であったときの恩師であり、現在、同協会に非常勤で勤務される窪田洋二氏から勧められ、執筆したものです。

 都市農業における庭先直売所と、新品種として登録されたキウイフルーツ「東京ゴールド」の取り組み、また、本年4月に施行された改正種苗法に基づく自家増殖許諾手続きの経緯などをまとめたものです。

 

 本稿執筆にあたっては、窪田先生の他、JA東京むさし小平支店の梯浩和さんに事前にチェックしていただきました。また、協会の駒村研三専務理事に大変お世話になりました。

梯さんには、以前、大日本農会の「農業」誌に論文掲載されるときに続き、今回もご指導いただき感謝申し上げます。

 

 掲載誌をたくさんいただきましたので、関係する機関や東京ゴールドのことでお世話になっている方にはお送りさせていただきました。

 

 お客様の中でご覧になりたい方がおられれば、店頭でお伝えください。

 

私が農業試験場の研修生であったのは、平成11年度です。そこで当園には珍しい黄色いキウイがあることを申し出ました。

当時、窪田さんはまだ旧姓・佐藤を名乗っていました。佐藤姓の多い試験場では、下の名前、洋二さんと呼ぶならわしになっていました。

洋二さんに東京ゴールドの品種登録の話を最初に聞いたのは、平成19年3月のことでした。もう15年も前になります。当時、洋二さんは農業振興事務所の技術総合調整係長、いわゆる専技に異動されていました。もちろんまだ、東京ゴールドという名前も付いていませんでした。

東京ゴールド登録申請以来、私は果樹の品種と育種と種苗法を学んできました。育種をやるのは変人だと農大時代に思っていましたが、東京ゴールド以来、私も少し変人になったと思うようになりました。悪い気はしません。

多くの民間育種家に興味を持ちました。巨峰を育てた大井上康、ピオーネを作出した井川秀雄が、霞を食うような貧乏をされていたことを良いと思うブドウ農家はいないと思います。

長崎県のジャガイモの民間育種家・俵正彦氏は、圃場での丹念な観察から多数の突然変異を発見し、多くの個性的な新品種を世に出しました。これは交配に頼らなくても、普段の農家の仕事の中でも新品種を育成することができるということであり、しかもそのような品種はその土地の環境に適応しやすいという傾向があります。これは生産過程で農産物に触れる機会の多い農家だからこそ、普段から心に留めておくべきことと思います。

いつの日か、東京ゴールドの2号を作りたいと思います。また、種苗法にはライフワークとして今後もかかわっていきたいと思います。

 

種苗法については、正確に理解をされていないのが何とも残念なことです。ツイッターなどのSNSには、悪意ある書き込みが散見されます。

「農家の自家採種が全面禁止になる」「許諾料の負担が過大で農家経営が破綻する」「多国籍企業が日本の種苗を支配する」など、ありもしないことを声高に主張します。さらに主要農産物種子法の廃止や、農業競争力強化支援法の特定のじょうぶんと結びつけてミスリードし、果ては、遺伝子組み換え食品やグリホサート・ネオニコチノイドなどの農薬(特段危険でもないが)などと結びつけて根拠のない不安を煽り立てています。

この議論を主導しているのは、元農林水産大臣の弁護士であることは嘆かわしい限りです。

そしてツイッターでこれらの議論を賛同する人の多くが、例えばコロナに関してただの風邪だと嘯き、あるいはワクチンは危険、マスクは不要などと事実に立脚しない陰謀論に与していることに気づきます。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻で、ロシアを擁護しているのもこれらの人々です。

このような陰謀論とは、私たちの農業生産現場は全く関係ありません。種苗法は、あくまでも技術的、実務的なものです。今後もこの種苗法のことはしっかり勉強していきたい、日本で一番種苗法に詳しい果樹農家になりたいとも思っています。

 

本稿で一番書きたかった内容は、本年4月に施行された改正種苗法に基づく自家増殖許諾に関する事です。

このことについては、財団側の担当として調整に当たっていただいた東京都農林総合研究センター研究企画室の片岡真弓先生(現・農業振興事務所)には大変感謝申し上げます。本当に感謝を申し上げます。嘘じゃないです、本当に感謝しています。

東京ゴールドは、私と東京都農林水産振興財団(以下、財団)が育成者権を1:9の割合で共有しております。自家増殖許諾手続きについての考え方は、私と財団とでは、考えに大きな隔たりがありました。

私は、わずかな金額であっても(たとえ1本10円でも)許諾料を取るべきと考え、令和2年3月に種苗法改正案が日本農業新聞で発表されてすぐに、片岡先生の前任者である細井知弘先生に伝えました。コロナの影響もあり、種苗法が改正されたのは令和2年12月ですが、その間も私のこの考えは変わることはなく、細井先生から片岡先生に担当が代わる前も代わってからも要所要所で同様の考えを伝えておりました。

いずれにしろ、許諾料を取ることは、今回の種苗法改正の趣旨から考えて当然だと私は思っておりました。何のための法改正であったのかと言えば、育成者権者の権利強化のためであったはずです。国産農産物の輸出拡大のためでもありますが、むしろ知的財産権をまったく軽視する中国・韓国等に格の違いを見せつけるために行った改正ではないでしょうか。

しかし、私と財団との間でこの件の意見のすり合わせが始まったのは令和3年11月以降でした。

私は「有償・手続きあり」を主張し、これに対して財団側は「無償・手続きなし」を考えていたようです。両者の意見に隔たりがある中、結果として、両者の間を取る形で「無償・手続きあり」という形で今回の発表となりました。私自身は満足ではありませんでしたが、東京ゴールドの育成者権の9割を持つ財団には最終的に譲らざるを得ないと考えておりました。

許諾手続きの内容が財団のホームページ内で発表されたのが、令和4年3月30日夜7時頃でした。4月1日に施行されていることが決まっている中で、30時間足らずの周知期間しかなく、間近の発表となりました。私も当事者としてお詫びいたします。

 

 

 以上、主として今回の原稿の中でボツになった事項を中心に書きました。いずれ原稿は、当園ホームページ内で掲載させていただきたいと考えております。

 今後とも、ライフワークとして種苗法を学んでまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。今回はありがとうございました。

 

 

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