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2018-05-11 22:00:00

【重要】創森社 「育てて楽しむキウイフルーツ」について

 

先月ですが、創森社からキウイフルーツの新しい書籍が刊行されました。 

 

村上覚・末澤克彦・西山一朗著「育てて楽しむキウイフルーツ 栽培・利用加工」です。

 

 

東京ゴールドが初めて書籍内で紹介されました。大変ありがたいことと思っています。 

 

 

著書は、内容的にも平易ですし、とても良くまとまっています。農家や家庭栽培の人におすすめいたします。

特に栄養学の西山先生が著者に入っているので、栄養面で1章割いているのが特徴的です。

 

また、最近のキウイフルーツかいよう病に関する知見や、それに合わせて品種の倍数性(東京ゴールドは4倍体、他に2倍体と6倍体がある)の分類が記述されているのもありがたいと思います。さらに、著者の末澤先生が香川県で研究されていることから、香川県内で新しく育成された品種(さぬきゴールド等)の紹介も詳しく、興味深いものでした。 

 

東京ゴールドについても、31ページの品種紹介の欄では「今後普及が期待される」と記述していただき、育成者として本当にありがたく思っておりま 

 

 

ただ1点、東京ゴールドについて誤解を招く表現がありますので、この場で指摘させていただきます。

 

27ページにキウイの品種特性を記した表があり、その中で東京ゴールドの来歴として

 

 

 

「中国から導入された苗木から選抜された系統」

 

 

 

と記されています。

 

また、その注釈として、「農林水産省登録品種データベースを引用」とあります 

 

 

東京ゴールドの来歴としては、本HPの「東京ゴールドについて」の中で書いた通り、私の父が園芸屋からオス木として買った苗が、間違えていた、ということに始まるので、来歴不明と書いてもらえれば良いのですが、

 

あえて「中国から導入した」とか「選抜された系統」とか書かれてしまうのは、誤解を与えるように思います。

 

品種登録の出願の願書には、

 

「平成11年頃、東京都小平市大沼町の生産者の圃場で発見し、その後東京都農業試験場果樹圃場で譲り受け栽培」

 

「育成者所有の品種名不詳の品種の枝変わりである」

 

とあります。

 

その当時の研究員さんが「この品種の来歴は、「発見」ということに価値がある」と強調していたので、その通りなのだろうと思います。

 

 

 

つまり育成の経緯は、育成ではなく「発見」でして、それ以上でもそれ以下でもないのがこの品種の特徴です。

 

他の多くの品種と違い、交配したり、育成したり、あるいは選抜したとかいう育種の過程を経ることなく、生涯一農家であった父が、しかも野菜農家であった父が家庭園芸として栽培していたキウイの中から発見されるという、偶然が積み重ねられた「ものがたり」がこの品種にはあります。

 

要するに、育成者である私にとっては、来歴不明であることが重要なことです。

 

 

 

もちろんほとんどの人にとってはどうでも良いようなことなので、読み過ごしてしまって良いのですが、

 

個人的にはこういう「ものがたり」が面白いと思うし、世の中の注目を集めているのもこうした来歴によるものと思っています。

 

 

 

多くの読者の方にはあまり大きなことではありませんので、特に書籍の方を訂正してほしいというわけではありませんが、育成者である私にとっては重要なことでしたので、あえて筆を取らせていただきました。

 

 

 

なお、本書の内容についてはいずれにしても良いものですので、キウイを栽培されている方にはプロアマ問わず、一読をお勧めいたします。

 

 

 

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